競技玩具・競技ホビー平行運用論

「競技ホビー」および「平行運用論」は、2012年4月1日の日記にて、あーさんこと神在月禅さんへのコメレス中に生まれた考えで、 簡単に言うと、単一の「競技玩具」がリセット無しに進化を続けると、 玩具と呼ぶには少し高い投資と技術が必要になる存在「競技ホビー」へと昇華するもので、 この競技ホビーを競技玩具と同時に展開していくことで、 相互に作用し合いより発展できるのでは、というのが今回のお話です。



競技玩具の始祖と言えるミニ四駆は幾度かのブームを経験して、 なお現在も新製品を輩出し続けています。 そして、その誕生自体は子供向けであり、 その大きなブームのいずれも、子供向け漫画・アニメによるメディアミックスの成功から来ています。 しかしながら、長年にわたり改造パーツとノウハウを蓄積し続けたことで、 その購買層の年齢的な幅は広く、 機体性能向上に必要なパーツも高額なものが目立ち、改造にもある程度の技術が必要となるなど、 他の競技玩具と比べると、ややハイレベルとなっています。 これに伴い、購買層の中心は大人へとシフトし、 メーカー側もそれを考慮し、大会への大人の参加を可能にしたり、 過去商品の復刻、大人向け雑誌・番組での露出などで対応しています。

この、本来子供向けであるはずなのに、購買層の多くを大人が占めるというギャップの要因は、 もちろん、その遊び自体が大人も楽しめるほど作りこまれているものなのは言うまでも無いですが、 競技玩具自体の定義の流動性、具体的には、玩具に対する安全性の要求や、子どもの技術低下への対応が、 時代の流れによって変化してきたことが考えられます。 パーツをランナーから切り取ってスナップフィットとねじで組み上げるだけという、 登場当初は子どもでも簡単と言うコンセプトは、 現在の子どもにとっては、かなり難しい作業となっていて、 また、小さな金属部品の露出なども、現在の玩具の基準には適していません。



一方で、ビーダマンやベイブレードと言った、同様に古参と言える競技玩具は、 進化とリセットを繰り返すことでこの変化に柔軟に対応し、 自身を子どもの玩具たらしめています。 例えば、ネジ止めの廃止や組み立てキットから組み立て済み商品への移行などです。 また、改造にある程度の制限を持たせることで、競技のパワーバランスをメーカー側でコントロールし、 ある程度パーツの種類が増えたところでシリーズをリセット、初心者の新規参入と、上級者の卒業を促します。



ミニ四駆は、長年にわたりここで言うシリーズのリセットを行わず、 共通のパーツ、共通のプラットフォームを維持・拡大させ続けてきたため、 上級者が卒業することなく前述のような状態に至ってると考えられます。 この状態を競技玩具とは異なるジャンル「競技ホビー」と呼称したいと思います。

ミニ四駆がリセットを行わないのは、出所が玩具メーカーでなく模型メーカーな所が大きいでしょう。 常に子どもを相手にする必要がある玩具と違い、模型は子どもから大人まで幅広く楽しめるものです。 ユーザーが新しい理論を生み出すことを阻害し進化を抑制することになる改造の自由度の制限や、 今まで技術を蓄積してきた上級者を裏切ることにもなる大掛かりなリセットは、 模型メーカーの理念からすれば避けるべきなのかもしれません。

競技玩具が玩具としての体裁を保ち続けることは、 ユーザーの世代を常に入れ替えることで、ユーザーの新規参入を容易にすると同時に、 アニメや漫画で数年単位の短期的な販促をかけることで、瞬発的なブームを起こせる可能性もあります。 しかしながら、子供向けと言うことで、価格的構造的制限が生まれ、性能的な進化には上限があります。

一方、競技ホビーとなると、 ユーザーの主体が大人になることで、価格的構造的制限は弱まり、改造の自由度が上がり、 ユーザーが新機能・新技を生み出し、それを商品にフィードバックするなど、 進化が自発的に促進する可能性があります。 反面、内容がよりシビアになり、素人がとっつきにくくなってしまいます。 また、重点的に新製品を投下できず、大きなブームになりにくいのもホビージャンルの特徴であり、 近場に取り扱い店舗がなく購入しづらい点も、新規ユーザーを獲得しにくい理由です。



さて、競技ホビーの話をする時、外すことの出来ない競技玩具がもう一つ。それはハイパーヨーヨーです。 ハイパーヨーヨー自身は、すでに海外で競技ホビー状態となっていた競技ヨーヨーを輸入し、 男児玩具として販売、専用の大会等を運営したものです。 ハード面では競技ホビーである競技ヨーヨーをそのまま使ったものですが、 ソフト面では競技玩具的運用であり、今まで三度登場しそのうちの2度が大きなブームとなっています。

ハイパーヨーヨーの偉大な点と言えるのが、 ハイパーヨーヨーでヨーヨーをはじめた子どもが、 そのまま上手くなり競技ヨーヨーの世界へ進出し、今や世界大会の上位を日本人で独占するようになったことです。 そして競技ヨーヨーの世界で上級者となった人たちが、ハイパーヨーヨーの世界で指導員や伝道師として活躍しています。 また、一部の輸入品店やネットショッピングでしか購入できなかった競技ヨーヨーが、 一般の玩具店で同等のものを容易に安価に入手できるようになったことも利点と言えます。

この、競技玩具で始めた人が技術を上げて競技ホビーへ手を出し、競技玩具の指導役として機能する点は、 新規ユーザーを獲得しづらい競技ホビーと、上級者をパージしなければならない競技玩具において、 理想的な循環ということができます。 また、進化を促しやすい競技ホビーで生まれた技術を競技玩具側へフィードバックできるため、 競技玩具側もバリエーションや進化の選択肢を増やすことにも繋がっています。



以上のことから、ビーダマン、ベイブレードのような競技玩具単体で進行しているものや、 ミニ四駆のような競技ホビー単体で進行しているようなものは、 それぞれ、競技玩具と競技ホビーが長期的な目で平行して運用されるよう、 兄貴分・弟分の玩具・ホビーを考案してやれば、 理想的な世代と技術の永久機関として機能すると考えられます。

2012/06/18


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