力のバンダイ、技のトミー

ちょっと昔によく出た話で「男児のトミー、女児のタカラ」みたいな事を言われてたらしいですね。 後、「キャラからバンダイ、トイからトミー」的な比較もよくされているようです。 そんな感じで最近のバンダイとタカラトミーを比べてみると、 「力のバンダイ、技のトミー」みたいな言い回しがしっくりきます。


ご存じバンダイは、特撮やアニメを使ったキャラ玩具やなりきり玩具が主力です。 それらの映像作品はいずれも長期にわたり人気を維持し定番化しているため、 大きく安定したコンテンツ群となって、企業運営の基盤になっているといえます。 特に最近は、これらのコンテンツ群がスパイラル手的に人気を上昇させ、 また、キャラクタープラモデルジャンルではガンプラ以来と言っても過言ではない、 「ダンボール戦記」の大ブームも、さらなる追い風になっています。

一方、タカラトミーの方ですが、 合併前から主力の商品群は玩具オリジナルが主体となっており、 TV連動の際も玩具を題材とするパターンが、最近は特に強くなっています。 男児・女児ともロングセラーコンテンツが強いですが、 その一方で男児ホビーや話題性のあるコンテンツを断続的に送り出すことで幅広い層に人気があります。 しかしながら瞬発的なヒットに頼る傾向があり、第2次ベイブレードブームがひと段落すると、 バンダイサイドの隆盛にも押され、どうにもここのところパッとしません。

このパッとしなささはタカラトミー自身も問題視しているようで、 ここのところ頻繁に組織改造を行って、主に企画力の強化でこれを打開しようとしているようです。 この流れこそ、まさに「力のバンダイ、技のトミー」を象徴していると言えます。 すなわち、少ない新規企画を持ち前の体力で大きく育てるバンダイに対して、 矢継ぎ早に新規企画を繰り出してくる、技のデパートのようなタカラトミーとなるわけです。 力とは販促力や営業力、技とは企画・開発力というわけです。


この両社の傾向の違いは、商品の展開のさせ方によく表れています。 例えば、あれだけ流行したタカラトミーベイブレードのメタルファイトシリーズですが、 始動当初は取り扱い店舗が限られていて、ブームになるまでは入手に苦労したものです。 一方、そのブームに反応する形でスタートしたバンダイハイパーヨーヨーの3期シリーズですが、 ベイブレードのそれを大きく上回る規模の、WHF先行配布を皮切りに、 1期シリーズのブームを下支えした認定店を中心として、 初動時でかなりの量の店舗で取り扱われました。 ただしこの例は第2次ベイブレードブームで復活競技玩具の可能性が店舗レベルで着目され、 ハイパーヨーヨーはその流れにうまく乗った感じともいえます。

一方で、ベイブレード、ハイパーヨーヨーのブームが落ち着いてきた2012年に 両社が偶然か必然かほぼ同時に送り出してきたのが、 タカラトミーの「ビーストサーガ」とバンダイの「モンスーノ」です。 これは、どちらも立体玩具とカードを組み合わせてバトルを行う、 いわゆる「第三世代競技玩具」の要素を持っています。 (ビーストサーガは競技に物理要素が無いので、厳密には狭義の競技玩具ではないですが、 今回の話では些末な問題なので気にせず)

折しもハイパーヨーヨーと同時期に復活競技玩具枠で登場した 第三世代競技玩具のフラッグシップ的存在といえるセガトイズの「爆丸」が、 ベイブレードとハイパーヨーヨーが減速して行く中、 比較的よい水準を維持できていると観測されているなかで、 ビーストサーガとモンスーノの登場は第三世代競技玩具における大きな局面になると期待されます。

ところがところが、ビーストサーガが売られている店舗が全然見当たらない。 タカトミボーイズホビー部がかなり力を入れて開発したという前情報の割にこのザマは何かと。 知名度的にも最強ジャンプでの連載のみなのでイマイチ。 対してモンスーノの方はと言うと、もうあちこちで売っています。 それも、かなりしっかりとした売り場面積で。 さらに発売とアニメ放映がほぼ同時で、子供の食いつきが思ったよりいいんですね。


タカラトミーの考え方として、ブームはいきなり起こるものではなく、 引き金となるアニメ放映等の前段階である程度商品の展開を進めておくことが良しとしているようです。 現にメタルファイトベイブレードはまさにその流れでしたし、 ビーストサーガにしても取り扱い店舗を着実に増やしつつ、 2013年の年始にはベイブレードの後番としてアニメをスタートさせます。 逆にクサビのようにあまりにもブームの兆しが無いものに対しても 最小限の浪費で打ち切ることも可能となります。

この考え方自体は悪いものと思いませんが、 やはり初動時の取り扱い店が少ないのは考え物です。 ある程度親離れをし行動範囲が狭くなった小学生を対象にしているとなると 対象世代と商品の遭遇率が低いのはかなりのマイナスといえます。 さらに言えば、取り扱い店舗の数の差は、 先に述べた企業体力や企画開発力の差というよりかは、 その体質からくる注力する分野の差。 あえて言うと、企画に注力するばかりに営業がないがしろになってるんじゃないの!?と言うことです。

クサビの例を出しましたが、 逆にクサビと好対称と言えるのがバンダイのエックスカラビナーです。 潜在的なポテンシャルにしても、登場商品の数や打ち切りのタイミングにしても かなり同等と言えますが、 露出の多さや入手のしやすさではカラビナーの方が、勝ってた気がします。 (カラビナーの失敗は機能の多様性が無かったのと、方向性が競技から外れていった事でしょう。 クサビの敗因は、取り扱い店舗の少なさと・・・デザインかなぁ)

ダメなら次、ダメなら次という、企画力にものをいわせた方針も、 体力的に大きく展開できないため仕方ないとも考えられますが、 もっとしっかり販促や展開を進めていけばもっとよくなったものや、 少なくともダメと判断されるタイミング、つまり寿命やポテンシャルを引き延ばせたはず。 もっと一つ一つの企画を大事に育ててもらいたいです。


ちょっと余談ですが、結局のところ、この第3次は復活競技玩具ブームなわけで、 現状でベイブレードが終了、ヨーヨーが終息気味で、爆丸がまだがんばっているところに ビーダマンが盛り上げてきた段階が今のところなんですね。 でもこのままビーダマンがピークを過ぎて、そのころになれば爆丸もさすがに疲れてるでしょうから、 それが、経験的におよそ2年後、つまり2015年頃か。 そのころまでになにかしら新しい競技玩具を育てていかないと、 また氷河期と呼ばれた2007年頃のようになってしまいますよこれと言う話です。

復活競技玩具に味を占めたとは言え、 さすがに中2年程度でベイブレード復活させるのもあれだし(3〜4年は置きたいよね)。 結局1次と2次のブームの間に間があかなかったのは、 1次ブームが生きている間に2次ブームの要素をそろえられたことにあると思うので (第1世代競技玩具であるミニ四駆・スパビー・ヨーヨーをやってる最中に 第2世代競技玩具であるベイブレードを仕掛けられ、 そこからバトビー・クラギ・弾丸レーサーに発展したこと)、 今の3次ブームが死んでしまう前に何かしら4次ブームの準備をしておきたいよね。 そうすれば、ベイブレードの再々復活があるとしてもその4次ブームの中に滑り込ませることができるし。

おそらくその役回りは、第3世代競技玩具か、まだ見ぬ第4世代の登場かのどちらかでしょうね。 ただ、第3世代の台頭と言えるモンスーノとビーストサーガにしても、 現状のままだとそのポテンシャルに足りてない感じがしますし、 爆丸は続いている限りは大きなブームになり得ないジンクスもあるし・・・。 第1次ベイブレードインパクトに匹敵するような パラダイムシフトを起こせる新規の競技玩具を企画してもらいたいものです。


結局新規企画頼みかよと言われそうですが、 「ダメなら次」のダメ判断を早くしたあまり、せっかくの原石を失う可能性だってあるのです。 初代ベイブレードだって最初大した人気でも無かったのに、 がんばって続けたからあれだけのブーム、インパクト、パラダイムシフトを起こせたんですから。

後はとにかくどんな商品でも、もっと営業努力して、 初期の取り扱い店舗をとにかく増やしてほしい。 今回は究極これだけ言いたかったですが、つらつらと長引いてしまいました。 「力のバンダイ、技のトミー」その体質は両社それぞれ良いところも悪いところもありますが、 良いところはのばしつつ、悪いところもきちんと改善していってもらいたいです。

2012/12/29


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